
この研究では人間同士の関係を工学的に測定しています。人間同士の関係は、人が常に他人と接する際に気にするものであり、感じていることでもあります。しかし、人間関係を具体的に説明するのは非常に難しいです。同時に、どうすれば人間関係が向上するのか、何がキーアイテムなのかは解明されていません。つまり、人間関係は人が常に体感していることでありながら、具体的に説明はできないことです。
そこで、私の研究では人間関係を工学的に測定して、人間関係を解明、そしてアシストを行っていきたいと考えています。研究では、同じ目標に対して作業を行う集団=チームに着目し、チームが持つチームワークを測っています。チームワークの測定には、人間が他人と協調して作業がうまくいったかが重要となります。そこで、私の研究では他人との協調時に人が生じさせる「気づかい」をもとにチームワーク測定を行っています。
ここで、「気づかい」と聞くと、人に対する思いやりなどをイメージし、いいことであると考えがちですが、私はそれだけが「気づかい」ではないと考えています。私の研究における「気づかい」は、“協調作業において、他者の介入によって変化する操作”と定義しています。つまり、「気づかい」は、他者がいることによって、自分が本来の動きとは違う動きをしてしまうものだと考えています。したがって、「気づかい」は、いいことだけでなく、悪い方向にも影響を生じさせる場合もあるのです。
現在は、この「気づかい」を人工知能を用いて推定し、そこからチームワークの評価を行っています。最新の研究成果によって、「気づかい」を用いることによって人間の相性がだんだんと測れるようになってきています。また、「気づかい」をアシストに用いる研究を行われており、世界初のチームワークアシストも行っている途中です。
この研究が進み、人間関係を工学的に測れるようになった際には、人間同士の相性を数値で表したり、仕事で相性のいい人間同士をチームで組ませる等の支援が可能になると考えています。相性のいいチームは、個人の能力を凌駕するパフォーマンスを発揮させ、思いもよらぬ成果をもたらすこともあります。私の研究では、そのようなチームを作れるような評価・アシストを行いたいと考えています。
主な発表論文
- 佐々木元気,五十嵐洋:“ダイナミクスを考慮した協調作業における気づかい推定”,電気学会産業応用部門産業計測制御研究会,IIC-17-016,2017/11/17. (Paper award)
- 佐々木 元気、新居 駿也、五十嵐 洋: “力のインタラクションを考慮した協調作業における気づかい推定”,第18回 計測自動制御学会システムインテグレーション部門講演会,3D3-02,2017/12/22. (Presentation award)
- G. Sasaki and H. Igarashi: “Temporal Analysis of CFO in Cooperative Task for Teamwork Assist,” IECON 2018 – 44th Annual Conference of the IEEE Industrial Electronics Society, pp. 5487-5492, 2018.