個々の引き込まれやすさを利用した、場の同期リズムの制御

 近年、人々とロボットが共生する社会になりつつあります。人々とロボットが良い関係で共存するためには多くの課題を解決する必要があります。その一つとして、リズム同期が挙げられると考えています。実際にリズム同期の良し悪しは協調作業などの他者との関わりにおいて重大な影響を与えることが様々な分野から報告されています。
 人ー機械でのリズム同期に関する研究は多く行われていますが、同時に未解決の課題も存在します。例えば、実験環境が極めて限定的な条件である点、人に負荷のかかるような同期である点や応用の幅が狭くなる点などが挙げられます。そこで、私たちは”相互引き込み”に着目をしました。相互引き込みとは、人のリズムが非意図的に双方向で引き込まれることを指します。隣で刻んでいるリズムに自身のリズムが引っ張られたり、前を歩く人の歩行ペースに勝手に合わさってしまうようなイメージです。相互引き込みは人同士の同期に自然と利用されており、日常で自然発生する柔軟なリズム同期の実現には必要不可欠です。また、相互引き込みによる同期は同期のバランスがよく、人にとっても低負荷であると報告されています。これをロボットとの同期にも適応させることで先述の課題を解決できるのではないかと考えています。例えば、引き込まれやすさを個人ごとに変化させることができれば、全体のリズムを、低負荷で制御可能になり、応用の幅が拡大するのではないかと考えられます。
 本研究では、個々の引き込みを利用し、ロボットと場の同期リズムを制御することを目的としています。

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