VR プレゼンテーションを行う空間には,様々な情報が膨大に存在すると予想される.しかし,その情報をすべて処理するのは不可能である.そこでヒトは情報の取捨選択を行い,適切と判断した方向へ注意を向ける.この情報を取捨選択する行為は,選択的注意として知られている.また,視覚における選択的注意によって,ヒトの視野の中に入っているものの,注意が向けられていないために物事を見落としてしまう非注意性盲目という事象がある.これは見えないゴリラ(The Invisible Gorilla)として知られる,ハーバード大学の有名な心理学の実験によって解明された.この選択的注意と選択的注意によって引き起こされた,非注意性盲目をVR空間内で明らかにすることは,VRプレゼンテーション中に行われた注意を評価する新たな指標となる.そこでこの研究では,我々が提案した三次元空間での視覚的注意分布推定手法である3D Attentionによって,非注意性盲目の定量化を図る.3D Attentionは注視点位置差によってガウス分布の膨張が変化する数理モデルであり,ヒトの注意分布を確率分布として計算する.動画に示すような仮想空間を被験者に提示し,中心に配置した出現する黒のボールに計算された3D Attentionを比較し実験を勧めた.結果は,出現する黒のボールに気づけなかった被験者の注意度は気づいた被験者よりも小さいという結果となった.今後は非注意性盲目の発生しきい値の特定に向け考察を進める.
被験者に提示した仮想環境