誘導は,ユーザの注意を過度に奪い没入感を低下させる課題がある.また,輝度変調を用いた非明示的な手法は没入感を維持できるものの,アイトラッキングによる認知負荷推定において「対光反射」によるノイズを誘発し,正確な瞳孔計測を妨げる点が問題視されていた.
そこで本研究では,生理指標に干渉せず没入感を維持する自然な視線誘導として,ターゲット周辺の透過率を局所的に変化させる「不透明度変調を用いた視覚キュー」を提案した.本手法は,背景を覆う黒色レイヤーの不透明度をわずかに減少させることで周囲との微細な視覚的コントラストを生じさせ,無意識のうちに注意を誘導するものである.
提案手法の有効性を検証するため,以下の3段階の実験を実施した.
・知覚閾値の特定: 予備実験により,ユーザが変調に気づく平均閾値が4.863%であることを特定した.
・変調量の最適化: 0%から12%の範囲で実験を行い,視線誘導効果と非明示性のバランスを評価した.
・生理指標への影響: アイトラッキングを用い,変調が瞳孔径に与える物理的影響を測定した.
実験の結果,変調量4%において視覚探索の正答率が有意に向上し,反応時間の短縮が確認された.また,この強度は作業的負荷を最も低減させ,かつ違和感が少なく自然な誘導であるとの高い主観評価を得た.生理的評価においても,提案手法は瞳孔径に有意な変化を与えないことが示され,タスク終了時の精神的負荷の解放に伴う瞳孔の収縮を正確に捉えることができた.
本研究により,瞳孔径を用いた負荷推定と視線誘導を両立する手法の有効性が示された.今後は,瞳孔径から推定される認知負荷に応じてアシスト強度をリアルタイムで動的に制御する,パーソナライズされた適応型システムの構築を目指す.



