電気刺激を用いた眠気低減システム

近年,日本では毎年30万件以上の交通事故が発生している.事故の原因の47%は前方不注視であり,前方不注視を引き起こす大きな要因の一つは,居眠り運転である.また,コロナ禍によって,テレワークやリモート授業等の在宅でタスクを行える環境が発達したことや,自粛生活が続いたことで,以前よりも日中の眠気を訴える人が増加した.日中の眠気はその人の集中力を奪うため,結果として生産性の低下等の悪影響が生じる.

このような眠気による問題を解決するために,振動や芳香等の物理刺激を用いて眠気低減を試みる研究はあるが,リアルタイム性が無いという課題が報告されている.

そこで本研究では,タスク遂行中に眠気が存在することを前提として,タスク中に手掌部へ低周波電気刺激を提示した時の覚醒作用の評価を目的とし,電気刺激を用いた眠気低減システムの開発を目指した.被験者に計算タスクを与え,その時の覚醒状態と遂行タスクの作業量から評価を行った.覚醒状態の評価には,感性アナライザを用いた手法,タスク遂行状況による手法の2つを用いて実験を行った.

結果として,電気刺激を提示することで計算タスクの成績が上昇した.また本実験では,覚醒状態の評価には感性アナライザよりもタスク遂行状況による推定の方が適しているという結果を得た.今後は被験者と実験回数を増やし,より多くのデータから効果を検討する必要がある.

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